by SOrow in  

小説を書く時についやってしまうことシリーズ

シリーズになるのか分からないうちにシリーズとつけてしまうのもどうかと思いますが、思いついたものから書いていきたいと思います。

前後の文で同じ言葉を使うのを避けようとしてしまう

前後の文で同じ言葉を使うのを避けようとしてしまう。というわけで、具体例です。

彼は肩まで上げた右手をぎこちなく振りながら、強張った笑みを返した。

こんな文があったとすると、次の文に「肩」「上げる」「右手」「ぎこちない」「振る」「ながら」「強張る」「笑み」「返す」あたりのワードを入れたくなくなる感じですね。自分が読み手に回る時にはそういうの全然気にならないのですが、書き手に回ると無性に気になります。はい。今この文章内で「気になる」が二回続きましたね。「気にならないのですが」と「気になります」のダブルです。否定と肯定だから違うだろというツッコミを入れたくなりますが、しかしこれがまた気になります。でも日記なので妥協します。しかし「気になります」「妥協します」の「ます」終わりの続きも何か気になるという。「しかし」も続きましたね。これはアウトです。気持ち悪いし読みづらい。ここは「とはいえ」とか「されども」とか使ったらどうなのか。いやどちらも何かリズムが合わない。「そして」がいいのかそれとも間に文を挟むべきか。という感じで、日記すら書くのが面倒になってくる縛りプレイが発生します。小説だともっと時間がかかります。ただこういうことをやっても特に何かすごい賞取るとか超有名になるとかにはまったく一切繋がらないので、無意味だなあと思うのですが、ついですね。やってますね。ちなみに上の例文ですが、以下のように続ける場合は同じ表現を使っても許せます。許せるって何様だよ!(自分)

 彼は肩まで上げた右手をぎこちなく振りながら、強張った笑みを返した。それは頬の見事に引き攣った、見るに堪えない笑みだった。

はい。「笑み」が続いています。しかし許せます。要はこの繰り返しのリズムというのでしょうかね。強調したい時にはこれでいいんじゃないでしょうか(適当)。まあ全体の流れにもよるのですが、ここは敢えてこうしたいな、という時はそうしている気がします。その辺はもうフィーリングです。フィーリングということは理論的ではないために、説明もしづらいということで、この例文で何となく分かるという方はいらっしゃるのでしょうか。許せないバージョンも書いてみますか。

 彼は肩まで上げた右手をぎこちなく振りながら、強張った笑みを返した。そして惰性的に右手を上げたまま、頬を引き攣らせた笑顔を浮かべながら、歩き出した。

許せないというか……読みづらいですねこれ。読んでて気持ち悪いです。お前さっき強張った笑みって書いてんだから頬引き攣らせた笑顔を浮かべたとか書かなくても分かるだろしつこいよ読みづらいよという文章ですね。「右手を上げたまま」は「体勢はそのままに」とかでいいんじゃねえかな。というかそもそも要らないのでは。というわけで変更してみます。

 彼は肩まで上げた右手をぎこちなく振りながら、強張った笑みを返した。そしてそのまま歩き出した。右手は上げられたまま硬直し、一方その頬は神経質な痙攣を繰り返していた。

こんな感じですかね。最初と最後で右手が重複していますが、間に一つの文を挟めば同じ言葉を使っても許されるだろうという心意気です。こういう具合に誤魔化し誤魔化しやっていきます。ただこの例文は何か気に食わないので最終的に全部変えるということになりそうです。何でしょう。何かこうむずむずします。例文だからか。というか彼が誰なのか分からないしどこに歩いていくのかも分からないので非常に無意味な文章ですね。匿名性を高めた結果意味が希釈されて面白みも何もないものに仕上がりました。これはこれで読みづらいです。読んでいると時間を奪われる感があります。無意味! というわけで例文自体を変更します。ひねり出します。

 胃の上あたりに爆発しそうなものが固まっている。それが顔を引きつらせて、歯を食いしばらせて、涙を絞り出させる。ああ、もう嫌だなあ、と舞は思う。自分で自分の体が制御できない。ひたすらに大きな焦燥感が内臓から脂肪から筋肉から、自分の内側で四方八方に飛び回って、次から次へと涙を流させる。嫌だなあと舞は思う。思っても何も止まらない。ベッドの上でうずくまって、息をする度ひくつく背中も止められず、自分一人の自分の部屋で、ただ泣き続ける。さっきまでは一人じゃなかった。京平がいた。でも今はいない。舞が追い出したからだ。

ひねり出しました。一発書きなのでまだ読みづらい状態だと思います。これを許せる範囲に変えると以下のようになります。

 胃の上あたりに爆発しそうなものがある。凝り固まって、肉を焼いて、収拾のつかない焦燥感をまき散らす。それが顔を引き攣らせ、歯を食い縛らせて泣かせるのだ。ああ、もう嫌だなあ、と舞は思う。自分の体も感情も、何一つ制御できずにただ泣き続ける、こんなことは望んでいない。ベッドの上でうずくまり、何度も何度もしゃくり上げ、次から次に涙を目から吐き出しながら、嫌だなあ、と舞は思う。自分の部屋で一人きり、誰もこの状態を止めてはくれない。さっきまでは違ったのだ。さっきまでは、京平がいた。でも、もういない――私が彼を追い出した。

はい。「自分」が続きすぎなので排除。リズムが悪いので変更。「凝り固まって、肉を焼いて」は「て」が二連続ですが、まあリズムが良いからいいだろう判断ですね。そのあとの「顔を引き攣らせ」で「て」と母音が被っているので微妙なのですが、ここは「せ」で止まり、そのあとに「て」を置くことで何かこのリズムだよ!リズムが良けりゃいいんだよ!という思いを掻き立てます。この辺はまあ置いておくとして、ただこの文にも一つこれはいかんというポイントがあります。皆さん分かりますでしょうか。そう、「ない」被りです。「望んでいない」「止めてはくれない」、この被りです。一つ間に文を挟んでいるものの、何かこの被り方は許せませんね。リズム的にしっくりきません。どっちかを変えましょう。

 胃の上あたりに爆発しそうなものがある。凝り固まって、肉を焼いて、収拾のつかない焦燥感をまき散らす。それが顔を引き攣らせ、歯を食い縛らせて泣かせるのだ。ああ、もう嫌だなあ、と舞は思う。自分の体も感情も、何一つ制御できずにただ泣き続ける、こんなのはもう嫌だった。それでもベッドの上でうずくまり、何度も何度もしゃくり上げ、次から次に涙を目から吐き出している。自分の部屋でひとりきり、この状態を変えてくれる人はどこにもいない。さっきまでは違ったのだ。さっきまでは、京平がいた。しかし彼はもういない。彼はこの部屋から去っていった。舞によって、追い出されたのだ。

変えました。ええと……変えましたね。つなぎ方を変えました。これであまり被りません。そんな感じで変更していたら一つ許せないポイントが出現しました。「自分の部屋で一人きり」の部分ですね。変更後に「一人」と「人」で「人」が被りました。漢字だけじゃねえか!という感じですが、何かこれは気に食わないので、「一人」を「ひとり」と開くことで「人」被りを誤魔化します。誤魔化せました。オッケーです。ただこうしてみると表現的に最初の一発書きの方が良いような気がものすごくしてくるので、多分これも全直しの運命を辿りますね。徒労!

というわけで、私が小説を書く時にはこのように文章をひねり出しては自分の許せないポイントを誤魔化していく作業が延々と続きます。上手く誤魔化せなかったら最初の文章に戻してまた誤魔化していったりもします。前後を入れ替えたりあっちからこっちに持ってきたりもします。コピペ切り取り多用です。変更する時には元の文章を別のテキストファイルにコピペして取っておくのとは別に、ファイル自体も複製して取っておきます。大体七つくらいはコピーができます。途中で流れが気に食わなくなったらそのあたりから持ってきます。「削除だ!」となった文章も別の部分に使えることもたまにあります。でも完成すれば複製はすべて削除です。他に使い道がないんだよなあ……。そしてこの段落は「です」「ます」終わりが多いですね。というかそればかりじゃないか! ここまできたらもうネタとして放置です。

小説の書き出しは読み返す機会も多いので、変更被害に遭う率が高いですね。ちゃんと決まらなくてイライラするターンも長いです。あと今回前後の文ということで話を進めてきましたが、会話文の場合は語尾被りが無性に気になったり、段落挟んでも気になるものは気になったりで、割ともうしっちゃかめっちゃかです。何ヶ月か経ってから自分の作品を見返した時とか、「何でここがこうなってるんだ……」という思いを抱くこともよくあります。でもそれを変えるにはその前後も手を入れなきゃいけないし全体の再チェックもしなきゃいけないしということが経験上分かるので、もう封印です。あと何ヶ月かは封印です。三年くらい寝かすと許せる気分になっています。ただバグとか発生するとどうしても見返さなければいけないわけで、ゲーム作りはこの辺が難しいですね。公開直後ならまだ薄目で見ながら修正ができるのですが、数ヵ月経つと薄目で見るだけで「ああああ!」となります。自分の作品だと自分の気になるポイントが気になりすぎて辛いです。公開すれば気になる連鎖は無理矢理止められるのでそれが救いではあるのものの、その後時間が経つと見るのが辛くなる状態が必ずやってくるので、まあ辛いです。これ小説だけじゃなくて普通のゲームのテキストでもそうだったりします。文章全般がそうですね。もう色々気になりまくります。そのためどんなゲームでも三年くらい経たないと見返すのが辛いです。この期間を乗り越えられる手段が欲しい。そんな感じで話が大幅に逸れたところで終わります。

ちなみにこの日記の冒頭の、

シリーズになるのか分からないうちにシリーズとつけてしまうのもどうかと思いますが、思いついたものから書いていきたいと思います。

この文章に「思う」が三つも入っているのも直したくなるのですが、ただまあ日記だし三つも続くとこれはこれでいいかなという妥協の心が生まれます。これが二つなら変えているかもしれません。でも何か気持ち悪いのは気持ち悪いです。むずむずします。変えたい。でもめんどい。そのせめぎあいです。人様にメッセージ送る時もこの辺で時間を取られます。もっと感想送れるようになりたいのですが。ここがどうにも邪魔をします。文章書くのは難しいです。もっと早く書けるようにならんかなあ……。