by SOrow in  

ざっくり文

kazaさん(@kazaeditor)の配信にお邪魔して、お題でちょっとだけ文章を書いてみました。ざっくりすぎてもうざっくりとしか言えませんが、ざっくり書くの楽しかったです。

kazaさんが書かれていた小説は下記です。

  1. 泡雪 春物語/夕目紅 - カクヨム https://kakuyomu.jp/works/1177354054889140841

あの短時間でどうしてこんな文章を書けるんだ……と毎回脱帽です。やっぱり表現力というか、諸々すげえです。

以下は私のです。

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 家の呼び鈴を鳴らしても反応がない。携帯電話で呼び出し続けること一分、ようやく人の声が耳に入る。
「あい」
 音の響きだけなら可愛らしいが、かすれにかすれて不機嫌を露わにしているドスの利いた声で言われても、こいつ寝てたな、としか思えないものである。
「カスミさんさ、寝てたでしょ」
 指摘すると、んん、とまた喉を鳴らす低音を吐いたカスミは、十秒ほどの沈黙を置いてから、「あ!」、と音量調節を間違えたスピーカーのように耳を揺さぶる声を上げた。
「あー! キヨミちゃん! 違うって、これ違うから! ね! 私はそんな寝坊して人様待たせるような傍若無人の人間ではございませんですからね!」
「うん、まあどうでもいいけどドア開けてくれますかね、寒いんですよ」
 四月に入ったというのに、最低気温は相変わらず零下を下回り、雪が降ることすらある天気だ。泡雪の如くすぐに融けはするものの、雨と同様頭に嫌な重みを加え、空気を冷たく湿らせる。
「はい了解! 今すぐに! ただちにこのタカギカスミがキヨミ様のもとに参ります!」
 宣言してから電話が切られ、ドアの向こうから足音が聞こえてきた。相変わらずこのアパートは防音性がヤバイな、などと思いながら待つこと五秒、ようやく安っぽいブラウンのドアが開かれた。
「はい、セーフ!」
 グレーのスウェットの上下に身を包んでいるカスミは、両肩にまでかかる茶髪をあちらこちらに跳ねさせながら、鬼気迫った顔でそう宣言した。細面だがむくんでいる顔は、睡眠をたっぷり貪ったであろうことを教えてくれている。
「いやアウトだと思うよ、割と」
「いや割とセーフでしょ! 約束は忘れてないし! キヨミちゃんが我が家にいらっしゃることは覚えていたし!」
「うん、あなたが誘ったわけだしね」
「よし、じゃあトゥエンティフォー全部見ようか!」
 そう言ってカスミは部屋に入っていく。寝起きだというのに元気な女だ。嫌な寒さもどうでもいいと思わせるような、いつでも春満開な女だった。キヨミはそんなカスミの後に続きながら、それ今日で終わらないでしょ、とため息混じりに言った。